忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

苦しみこそが楽しみだ-「大正箱娘」を読み自らの業を思う

何故に狂おしく踊る舞姫よ
燃える時代の風 忘れさせるように
そして俺たちは飲み込まれてゆく
どす黒い穴の向こう側へ
 「舞姫」(THE BACK HORN)

さて、前回は「紅玉いづき」という作家さんについて紹介しました。
作家・紅玉いづきはライトノベルでデビューした

今回はその著作 「大正箱娘 新人記者と謎解き姫」について、紹介しまたいと思います。

「大正箱娘 新人記者と謎解き姫」(紅玉いづき)
あらすじ:新米新聞記者・英田紺は、ある事件に出くわし、悩んでいるところ、上司の紹介で、神楽坂にある箱屋敷と呼ばれる館を訪ねた。そこで箱娘・回向院うららと出会う。箱娘は、どんな箱を開けることができ、また閉じることも……。秘密や想いの詰まった箱と、女の自由を巡る物語。

ステロタイプからのギャップ

序盤で、新人記者・英田紺と箱娘・回向院うららの出会いのシーンがあります。だけど、うららの容姿のステロタイプなこと! “視線をあげていけば、帯よりも先に長い黒い髪があった。”“娘の肌は白く、まぶたには青い血管が浮いている。唇ばかりが、紅でも引いたように赤い”“現れたのは、真っ黒な瞳だった。大きい、と思った。”などなど。ありとあらゆる色を使って、鮮やかというよりはややグロテスクに、美少女を描き出しているのはさすがと言えますが、けっきょく描き出されたのは、長い黒い髪で、肌が白くて、唇は赤々と、眼の大きい、ステロタイプな美少女でした。俗世間飲まれたか、量産型ファンタジーに逆らえなかったか、と憤りました。
ここで本を閉じてもよかったのですが、「ミミズクと夜の王」を、「ガーデン・ロスト」を書いた紅玉いづきさんだ、このまま終わるはずはないと読み進めることにしました。
すると、すぐに期待に応えてくれました。
美少女は「箱娘」でした。箱入り娘ではなくて。ステロタイプな外見をしながら、中身がいっぷう変わっているから、そのギャップがキャラクターの魅力になっている。ステロタイプに描かれていると思ったのも、きっと、作者の手のひらの上だったのでしょう。

そして自らの業を思う

第二話「今際女優」で、刺さる台詞がありました。「今際女優」は、死に際の見事な女優・出水エチカと自殺した劇作家を巡る物語です。
私は演劇を作るうえで、役者の苦しみこそが観客を楽しませると考えています。稽古中の苦しみが、舞台のうえでの苦しみが、観客のフラストレーションと交わって、昇華することが理想の演劇だと信じています。役者が演じることを楽しんでる間は、もちろん演じることを楽しんでないといけないと思うんだけど、それだけしかないのなら、きっと、つまらない。大衆の表皮を撫でるだけの凡作になるのだろうと思います。
演劇っていうのは、業ですよ。生きていくのに必要のないもののはずなのに、それがないと生きていけない人もいる。

さて、話題は変わりますが、作中の時代背景として触れられています「平塚らいてう」以来のウーマンリブ運動を知るたびに思うことがあります。不自由を選ぶ自由はないんだろうか。首を傾げたくなることがあります。当事者ではない私が言うのはよくないのかもしれませんが。でも個々の権利を認めるということは、不自由でありたいという権利も認めなくてはいけないのではないでしょうか? 

応えは、続刊にあるかもしれません。そう、「大正箱娘 見習い記者と謎解き姫」は、すでに続刊が発行されています。知らなかった、というか「紅玉いづき」さん、ちょっと目を離した隙に多数発行しているじゃないですか……。
読まなければいけない本が増えました。読みたいが読まねばになる。本読みとしての業です。

PR

この記事へのコメント

Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧できます
 

山口県周南市や下松市の文系ねっとわーくを構築すべき活動中! ここでは演劇や映画、小説の感想、近隣の文系イベント情報を紹介します。

フリーエリア

Copyright ©  -- a deep calm like a wisdom heat blog --  All Rights Reserved powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]