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育ち間違えたとき、誰が育て直してくれるというのか-「ひかりのあしおと」に救いを探す

今まで無くしたものと これから君が見るもの
すべて取り替えたならば 変われるのかな 変われるのかな
「光のロック」(サンボマスター)
「ギンイロノウタ」(村田沙耶香)を読みました。
ふいに「コンビニ人間」が読みたくなって、書店に行きました。「コンビニ人間」は第155回芥川賞受賞作品です。つい最近の受賞作なので、品ぞろえているだろうと思っていたのですが、ありませんでした。仕方ないので、なんとなく気になった本を買いました。
家に帰って、読みはじめてから気づいたのですが、「コンビニ人間」と同じ著者でした。それと思わずに買ったというのは、なにか宿命なのようなものを感じます。帯に「祝・芥川賞」と書いてあるのに気づかなかったのは、さすがに自分でもどうかと思いますが。

さて、「ギンイロノウタ」は、表題作他「ひかりのあしおと」の2編を収録しています。どちらの物語にも共通するファクターがあり、1冊の本に収められるのがふさわしいなと思いました。

「ひかりのあしおと」(村田沙耶香)
あらすじ:幼少期のエピソードから光におびえながら暮らしている女子大生・古島誉は、いびつなレンアイ関係に救いを求めながら、母とは思えない母と日々暮らし、あるとき、”そこが陽だまりかと錯覚する様”な男子・芹沢蛍と出会う……。

あらすじだけ書き出してしまえば、ボーイ・ミーツ・ガール、まるで恋愛小説です。確かにそういった一面もあります。しかし、本題は、うまく育つことのできなかった少女のもがき様のように読みました。生き様ではなく、もがき様。

大人たちは育ててくれない

この物語は、情けないというか、大人げない大人はたくさん出てきます。悪意はないのでしょうが、誰も自分のことで精いっぱいです。そんな大人たちに囲まれて、時には利用されて、誉はうまく育つことができませんでした。うまく育つことができなかったどころか、何かに追い詰められています。軌道を修正しようとするけど、上手くいかない。もがけば、もがくほど、ますますおかしくなっていきます。ただ救いを求めているだけのに、どんどんずれていく。
そのさまが、生々しく、奇妙で、妙に愛らしく感じました。
だって、周りの情けない大人たちに比べて、歪みながらもまっとうであろうとしている誉は、どんなにずれていても健気に感じました。誉もまた「世界に×をつけないために自分に×をつけた」少女だったのかもしません。

はたして救われたのか

前述のとおり、この小説は、ボーイ・ミーツ・ガール、光をおびえる少女・誉と””そこが陽だまりかと錯覚する様な”少年・蛍の恋愛ものとして読むこともできます。
これまでの歪みから救ってくれるかと思いきや、蛍とのやりとりに救われた誉はますます歪んでしまいます。
色々と経て、誉は光へのおびえを克服します。一見、ハッピーエンドです。でも、私には、また新たな歪みのはじまりに思えました。それでも救いがあったことが嬉しくて、新たな歪みのはじまりでも健気な誉が報われたのなら、それでいいやと頭から毛布をかぶりたくなりました。
とても怖い物語でした。

表題作「ギンイロノウタ」については、次に繰り越し。村田沙耶香さんという作家さんにも興味が湧いてますし、そのへんとまとめて更新予定です。

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