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探しながら紡がれる物語-「ギンイロノウタ」もクレイジー

覚醒されたのは失くしてた傷跡
この身体が奪われてく
「侵食」(L'Arc~en~Ciel)

第155回芥川賞を受賞された村田沙耶香さん。作家仲間たちからは「クレイジー沙耶香」と呼ばれているそうです。語呂はいいですが、あまり捻りのある呼び名ではありません。きっと、率直な感想なんだろうなと思いました。

さて、「ギンイロノウタ」です。

あらすじ:極端に臆病な少女・土屋有里は、周囲におびえながら生きている。文房具屋で買った指し棒、銀色のステッキに救いを求めます。押し入れに自分だけの秘密の空間を作りあげていきますが、ある日……。

同時に収録されている「ひかりのあしおと」によく似た物語です。ただ長さが倍くらいある分、説明もしっかりしていました。なぜ有里が臆病におびえながら生きているのか、自分の価値をいっそう低くも積もるようになったのか。読み解くことができました。
うまく育てなかった少女が、藁のような支えを見つけたけど、それも奪われてしまって、燻りながら、歪みながら、大きくなっていく。
読み進めながら、救いはあるのだろうか? そればかりが気になりました。救いがあってほしいと願わずにはいられませんでした。

探しながら紡がれる物語

作風としてはまったく違うのですが、伊藤計劃さんを連想しました。伊藤計劃さんは2009年に若くして亡くなったSF作家さんで、代表作の「虐殺器官」と「ハーモニー」が劇場アニメとして公開され話題になりました。「虐殺器官」はアメリカで実写化映画の予定もあるそうです。
どこで読んだのか、定かでないのですが、伊藤計劃さんは、ある種の実験として小説を書いていたそうです。近未来の世界を作り上げて、その中で事件を起こり、自分の納得できる結論を探しながら物語を紡ぐ。いつもハッピーエンドにたどり着けず、今回も失敗か……とうなだれるそうですが。
村田沙耶香さんも同じような感覚で書いているのかなと思いました。
現代社会で、うまく育てなかった少女を設定して、少女はなんとかまともであろうと、自分で自分をまっとうに育てようとします。
伊藤計劃さんがSFで、世界の実験をしているように、村田沙耶香さんは人物を創造して、実験をしているような印象を抱きました。どんな結論になるのか、自分でも分からないまま、物語を書いているのだとしたら……。さすが「クレイジー沙耶香」です。
伝えたいことがあるから物語を書くのではなくて、伝えることを探しながら物語を書く。「ひかりのあしおと」も「ギンイロノウタ」も、そのプロセスを見せられたような気がします。
もしかすると、その最初の集大成が芥川賞受賞作「コンビニ人間」なのかなと思うと、ますます読みたくなりました。
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