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はたして将棋は物語に向いているか

先日、映画「3月のライオン」を見ながら、将棋という競技は、あんがい物語の題材に適しているのではないのかと思ったので、すこしまとめてみたいと思います。

野球型とサッカー型

まずスポーツものは大きく2種類に分けることができると思っています。スポーツそのものの特徴ではなくて、漫画や小説など物語として描こうとしたときの構造の話です。

○野球型

・1対1の連続

 球技はほとんどの場合、ボールのある位置が物語の中心になります。野球の場合はピッチャー対バッターの、いわば一騎打ちが物語の基点となります。それまでの展開に関係なく、たびたび基点に戻り、一騎打ちから物語が再開されます。2ストライクからのヒット、追い込まれてからの逆転も当たり前というのも描きやすいポイントかもしれません。
 ちなみにチーム・仲間たちは、ピッチャーが打たれたとき、つまり負けたときにフォローする存在として登場します。打たれてしまったけど、好守備によりアウトを取ることができた、とか。あるいは、出塁者したとき、孤島のような塁からホームに自分をつないでくれる存在として登場します。

・ポジション・打順から導き出されるキャラクター

 野球はポジションだけでキャラクターがある程度イメージできるようになっています。例えば4番ファーストだと、守備よりもバッティングで活躍するキャラクターだなとか、1番センターだと俊足だなとか。1チームを構成するだけでも9人、試合になれば最低18人は登場します。全員をこまかく描くのは大変です。主要なキャラクターは丁寧に描くにしても、その他のキャラクターはポジションで説明することで、効率的に物語を進めることができます。どんなチームなのかは、主要なキャラクターの能力に準じて設定されると思います。

・一打逆転があり得る

 9回裏10点差からでも逆転が可能です。極端な話、10打者連続ホームランで大逆転できます。それをやってしまうとあり得ないと読者は引いてしまうと思いますが、例えば、3点差で負けているなんて状況。チームメイトの懸命のバッティングにより2アウト満塁、満を持して主人公の打席……なんてのはよくあるパターンではないでしょうか? 野球では最大一打で4点まで得ることができます。凡打なら負け、ホームランなら一発逆転。最後まで分かりません。

○サッカー型

・集団対集団

 フィールド全体は連動しています。野球も厳密にいえば連動しているのですが、サッカーほどではありません。サッカーの場合、ボールから離れたところでは、いい位置でパスを受ける/受けさせないためのポジション取りの争いなどが行われています。それを丁寧に描くのも面白いと思いますが、ボール=試合の流れの中心が今どうなっているのか分かりにくい状況が続きます。
 逆にボールを持っているプレイヤーの視点から考えてみます。ボールを持ったはいいが、囲まれてしまった。そこに! いつの間にかディフェンダーがオーバーラップしていた。絶妙なパスを出した。窮地を救ったものが、視点の外で行われており、極めて都合のよい展開として受け止められがちです。個にフォーカスするのではなく、俯瞰した視点で描くほうが適しているように思います。

・チームカラーから導き出されるキャラクターはぼんやりと

 もちろんサッカーにもポジションはあります。しかし野球ほど、キャラクターの個性に直結はしません。(野球の場合、守備位置×打順なのでキャラクターが見えてくるのです)サッカーは11名と野球よりも必要人数が多いのに、効率的に描く方法がありません。
 一方で、野球よりもチームの戦法から個を描いていくことはできます。「強力なフォワードがいて、堅守カウンターのチームだ」「突出したプレイヤーはいないが、運動量からくる数の利で攻めてくる」など。チームの戦術を実現するための選手が見えてきます。しかし、サッカーは集団戦です。似たような選手が複数生まれ、個を描くには至りません。

・一打逆転はあり得ない

 大差から逆転することはできます。前半0-3だったが、後半で逆転、4-3で勝利したとか。きっとハーフタイムで、「相手チームの弱点が分かった」とか監督が言って、ポジション修正かマンマークかあったのでしょう。
 ただ、競技の現実性を考えれば、後半ロスタイム突入から3点差を逆転させることができません。野球と違い、サッカーは試合時間が限られています。現実的に逆転できない領域があって、それを超えてしまえば、都合のいい展開と読者に見放されてしまいます。しかもサッカーでは1度に1点までしか入らないので、まず同点になって、それから逆転と段階を踏む必要があります。1打逆転は競技のルール上、あり得ないのです。
 逆転の展開を描くには、時間の早い地点で、まず同点にしておかないといけません。


まとめると、野球は個を描くのに適していて、満塁逆転ホームランなど1打で物語を大きく動かすプレイがある。サッカーは、チームプレイ前提で個が描かれ、1プレイで流れが変わることはあっても、それだけで逆転することはない。といったところでしょうか。
だいたいの競技がどちらかに分類できると思います。テニスやボクシングは野球型(実は、野球はとても個人競技的だと思います)、バスケやラクビーはサッカー型です。すべてが一致するわけではありませんが、大まかに分類することができると思います。
野球の一打逆転や「ポジション×打順」でキャラクターを効率的に描けることはストーリーを描くに適しています。一方、サッカーは、1打逆転はなく、状況を一転させることは難しいです。残念ながらストーリーを描くには野球ほど適していないように思います。
競技としての優劣とは関係ありませんですが、物語の作りやすいさとしては、野球型に長があります。サッカーで名作と呼ばれる作品は、物語には向いていない競技上の特徴を克服する工夫が行われています。

はたして将棋は向いているのか?

さて、それで将棋はどちらに分類されるでしょうか?

○将棋

・1対1とみせかけて集団戦に近い

 ご存知の通り、将棋は1対1で戦うものです。しかし棋士ではなく、コマ単位で考えれば集団戦です。局地戦を繰り返しながら、王に迫り、迫られます。
 意外とコマ得という形で、局地戦では勝ち続けていたのに、いつの間にか深く敵駒の侵入を許しているときなどあります。サッカーのカウンターに似ているようにも思います。競技中の棋士の立ち位置はサッカーの監督に近いかもしれません。

・戦法からキャラクターを導きにくい

 将棋ではポジションに当たるものはありません。初期の駒の配置は全員共通、能力も共通です。戦術はいろいろあります。振り飛車でしっかり守ってからのカウンタータイプとか、居飛車穴熊で堅守からのじわじわ締め上げてくるタイプとか、様々です。棋士ごとに得意とする戦法はありますが、指し始めるまで分かりません。戦法とキャラクターはある程度切り離されたものです。そもそも描くべき人物が、自分と相手の2名のみなので、丁寧に描写することはできるかと思いますが。

・一打逆転はあり得る、けど

 将棋は局地戦の連続です。負け続けていてる状況から、一手で逆転することはあり得ます。「攻防の効いた好手」とかいいますけど、一手で状況が変わることはあります。棋譜を眺めているとき、あまりの鮮やかさに思わず息が漏れることがあるほどです。
 しかし、分かりにくい。将棋は現在の状況を点数で示すことができないのです。一打逆転があっても、分かりにくいのでは、作劇上、ないに等しいのではないでしょうか。

以上から将棋は、サッカー型なのではないかなと結論づけました。つまり、物語にしやすい競技ではないのです。(あれ、最初の感覚と違う結論、、、)確かに「3月のライオン」も盤面を丁寧に追ってるわけではありません。

将棋を、その競技を物語にするための工夫を考えてみたいと思います。まとまったら、更新します、、、(未定!)
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